― 日本の労働時間の変遷と「リカレント・タイムバジェット政策」から考える ―
私たちは、かつてないほど「時間の使い方」に向き合う時代に生きています。
人生100年時代といわれる現代、仮に1日24時間×365日×100年とすれば、生涯の時間は約87万時間にもなります。
その時間を、どう働き、どう遊び、どう学び、どう休むか――。この問いは、いまや個人だけでなく社会全体にとっても切実なテーマです。
「働きすぎの国」日本は、どう変わってきたのか?
1980年代の日本は、「世界一働く国」と言われていました。
当時の日本人の年間労働時間は2,100~2,200時間。OECD(経済協力開発機構)の他の加盟国と比べて長時間労働が常態化しており、日本は国際的に“workaholics(働き中毒)”と批判されていました。
これを受けて日本政府は1987年、年間1,800時間労働の実現を目標として掲げました。
それから約35年。2022年のOECD国際比較データによれば、日本の年間労働時間は1,607時間まで減少しています。これは、1日あたり平均で約4.4時間(1,607 ÷ 365)という計算になります。
「時間」を取り戻したZ世代が見ているもの
この変化に敏感なのが、Z世代(1990年代後半〜2010年頃生まれ)以降の若い世代です。
「終身雇用」「年功序列」といったかつての働き方に縛られることなく、自分の裁量で働き・学び・遊び・休むことを重視する傾向が強まっています。
このような価値観の変化に対応する政策が、OECDが提唱してきた「リカレント・タイムバジェット政策」です。
人生の中で、時間を「再配分」しながら生きることを促進するこの考え方は、副業・学び直し(リカレント教育)・ワーケーション・ボランティアといった柔軟な時間の使い方を支えるフレームになっています。
私たちは時間をどう「組み直す」か?
こうして獲得されつつある自由裁量の時間。
それを「単なる余暇」としてではなく、人生の再設計のための資源ととらえる視点が必要です。
- 副業で社会との関わりを持つ
- 学び直しでキャリアを広げる
- 遊びの中で人と出会い、地域とつながる
- 暮らしの中に“学ぶ場”を見つける
こうした選択が、87万時間の新しい価値を生み出します。
出典・参考
- OECD Labour Market Statistics(2022年)
https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=ANHRS
編集後記
あなたは、今日1日の時間をどう使いましたか?
時間を「節約」する時代から、「組み立て直す」時代へ。
87万時間という人生の時間が、あなたらしい形で活かされることを願っています。